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新日本無線 MUSES03のオフセット電圧とか諸々考察

 3日ほど前、twitterで上記の話題が賑った所ですが…(言い出しっぺ)

この問題、ググッた所アーリーアダプター諸兄が書かれてなかったのもあって、じゃあ言い出しっぺだし仕方ないちょっと書くか、という事でコラム的なアレです。

 

新日本無線株式会社 MUSES03 製品紹介ページ

MUSES03自体、新日本無線MUSESラインナップ初のシングルchJFETオペアンプと云う事で、元々MUSES01・02のスペックにも音にもガッカリしっ放しの自分としては相対的に見て食指が動くモノであったのは確かです。(MUSES01に至ってはスペックはOPA2111みたいな30年前の枯れた傑作をなぞるが如きモノでしたが、じゃあ2111みたいに味もあって音場も広くて所謂「音楽的」という表現に合致するか、そして@¥3,500.-出す価値があるかと言えば率直に疑問符が付きました)

いざDSを見てみると…GB積は12MHzノイズ電圧は7.5nV/√Hz(OPA627は5nV/√Hz@1kHz)、THD(+Nが付かない)は0.00003%(同条件10倍ゲインのOPA627のTHD+Nは0.0003%)、SRは35V/us…

う〜ん、まぁここまでは少なくとも01よりは大分マシだし、昨今の新世代の精密オペアンプのラインナップから観ると見劣りはするけど、今までのラインナップに比べれば相対的には頑張った感じはよく判るワケです(無論そこは評価したいという気持ちがあるのです)。

しかしそれでも、CMRRが90dBでPSRRが100dBですか…(OPA627AはCMRR110dB・PSRR120dB@100Hzで一桁分下回りますし、CMRRが100dBに届かない時点でI/Vには使うには信号ロスが大き過ぎてわざわざ選ぶ理由はなく、後述のバイアス電流の大きさもあって選択肢から除外されます。I/Vは単純にSRが速いだけではダメなのです)

そして今回の問題の大元である入力オフセット電圧がtypicalで1mV(それ自体は特に珍しくもなく、そこまで実際は大きくないと思っていたアタクシが甘かった)

入力バイアス電流typicalで5pA(ここは分かる)、max250pA(←えっ50倍?)

入力オフセット電流typicalで2pA(ここは分かる)、max220pA(←えっ110倍??)

まぁDSに書いてあるmaxなんてのは基本保険みたいなモンだし、そうそう実物では外れやしないだろう…そんなふうに考えていた時期が 俺にもありました

 

オペアンプというのは反転入力と非反転入力の電位差が0Vになる様に働くモノで(イマジナリーショートと云いますが)、オペアンプの反転入力・非反転入力間に発生したオフセット電圧というのは当然そのオペアンプに科されているゲイン倍に増幅されます。

手持ちにある秋月の店頭で買った6個のMUSES03を改めて実測してみましょう…反転入力に-を、非反転入力に+を繋げて直流レンジで見ればOKです。

#1 -5.6mV

#2 4.3mV

#3 -7.1mV

#4 2.8mV

#5 -1.8mV

#6 -9.2mV

こ  れ  は  ひ  ど  い

(少なくともtypicalで1mVというには盛り過ぎじゃないだろうか…?少なくとも似た様な公称のOPA141でもフツーに実測100uV切りますよ)

つまりどういう事かと云えば、等倍ゲインつまりボルテージフォロワの状態で出力にこれほどのオフセットが乗る事になります。

という事は#6を直流11倍ゲインの回路(よくあるRf10kΩでRgが1kΩ的な高ゲインの回路みたいな)に載っけた日には100mVのオフセットが出力に乗るワケです。まぁフツーにヘッドホン相手に使用する上では危険なレベルですね…

しかもmax値が定義されてないので、それに伴い設計する上でのワースト値も定義出来ず、今の段階ではハイエンド用に供するのは怖い印象が否めません。

NCの1,5,8pinにOffset Nullピンでも割り当てられていれば調整出来るのでまだ良いのでしょうが…それさえ無いとなれば、そのまま使えという事ですからね。

秋月はB級品でも掴まされたのか?という邪推すら生まれかねない数値です(いや普通に秋月で売ってる個体は正規品ですよ念の為)。

それにしたって、ここまでのバラ付きが出るとなると選別前提での購入になるワケですが、2,500.-ですか…桁2つ程安くないとやってられませんよ。

少なくともこの値段のオペアンプで鳴り物入りの鮮烈デビューをさせたいなら、ガッツリ選別して瑕疵の有り得ないレベルのを市井に投入してアーリーアダプターの評判を稼ぐ…なんてのもよくあるマーケティングだと思うんですがw

 

閑話休題…じゃあ、無理矢理でもいいから取り柄を探そうと考えるんですが、「出力電流が高めに採れる」という事位でしょうか。

(いや重めの負荷掛けたところで自身の熱でドリフトを起こしてしまい更に直流が乗る、というジレンマ)

しかも今月1日改訂のVer.4.2のDSを見たところ改訂部分として、P.4に出力保護抵抗の計算式としてこんな事が書いてありました。

MUSES03 データシート

う〜ん、これは頂けない。

ラインアウトの出力など、受け側のインピーダンスが十分高いアプリケーションの場合は気にならない所ですが、現状使われている実態や電源電圧が±3.5Vからというポタ向きの状況から、現状実運用では相応に受ける負荷は高い状況が多いのではと推察されます。

特に、低いインピーダンスのイヤホンや多ドラのIEMなんかに上記式を適用した回路を使った場合、ダンピング抵抗が大き過ぎてまず音量が取れない、クロスオーバーが変わってヘンな音になる…の様な副次的なマイナス要素を孕みます。
少なくともポタの運用では出力インピーダンスの低さは必須なのです。

(そもそも本来A47のダンピングはループ内に配置されているので、見かけ上の出力インピーダンスは低いのです)

じゃあ出力インピーダンスを低く保ちながら、どんな風に電流制限を掛けるか?を考えてみましょう。

 

一番手っ取り早いのは↓のやり方の応用です。

ADD CURRENT LIMIT TO THE BUF634

所謂A47の変形で、各ループ内ダンピング抵抗成分の両端電圧が等しくなる事を利用した方式で、抵抗の代わりに互い違いに接続したダイオードのVfを電圧参照源として用いるやり方です(どうあれ位相補償の為にダンピング手前から100p程度は入れて帰さないといけませんが)。

例えばSBDを用いたとしましょう。Vf=0.35Vとして、その時に尖頭電流として定義された250mAよか低くマージンを取り(上記の熱の因るドリフトの怖さも加味して)max50mAの負荷となる様に抵抗を設定します。

0.35[V]/0.05[A]=7[Ω]

7ΩをMUSES03の出力直列に入れ、後段のバッファ段出力直列に互い違いにしたSBDを入れます。

バッファから出てSBDを流れる電流がそれなりにある(不飽和〜凖飽和領域でVf未満でもちょいちょい流れます)為に相応にダイオード両端にノイズが発生しますが、オペアンプのNFBループ内なのでゲイン段のオペアンプのCMRによって排除される(※)ので気にする必要はありません。

※ちなみにこれがCMRRが低い(=ループ内に発生するノイズを除去する能力が低い)MUSES03をI/Vに使いたくない理由の一つでもあります。

 

結論としてハッキリ云えば、DCサーボや出力カップリングが入っていない回路での運用が怖い以上、「現状のMUSES03にゲインは持たせたくない」というのが正直なところですね。

もしA47的な構造でMUSES03を用いるのであれば、ガッツリ選別してDCオフセットが出ない担保が無い限りはバッファとしての運用しか考えられないと思います。

とは言えまだ先行量産段階との事ですから、本チャンのマスプロで是正されるかどうかも注視して行きたいところですね。

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